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武田薬品工業株式会社

4年前

原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾

原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾

原因不明の心肥大患者の鑑別²⁾

  • 心肥大、特に左室肥大は突然死心不全の原因となり患者QOLに大きな影響を及ぼす.
  • 左室肥大は多くの疾患に伴って生じるが、原因疾患としては高血圧が最も多い.
  • 高血圧以外に、弁膜症心アミロイドーシス心サルコイドーシスなど多岐に渡る.

左室肥大症の原因一覧

原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾

見逃したくない稀な左室肥大症

  • その他、 潜在患者数が多いとされる左室肥大症の原因のひとつが 「ファブリー(Fabry)病」である.
  • 左室肥大症の約3%にファブリー病が潜んでいるとの日本からの報告もある²⁾.
  • ファブリー病の生存期間中央値は男性で50年女性で70年とされる一方³⁾⁴⁾、 発症から診断までに10~15年程度かかるとされる¹⁾.
ファブリー病の早期治療は臨床的転帰の改善が期待できる可能性がある⁶⁾. また、早期診断は適切なタイミングでの治療導入と症状の進行抑制につながるため⁷⁾、 心肥大患者や下記に述べる四肢痛、その他の臓器障害を呈する患者において積極的に鑑別に挙げたい.

ファブリー病の病態と疫学

GLA遺伝子変異による先天代謝異常症

  • ファブリー病とは、細胞内ライソゾームの加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA (GLA) の遺伝子変異により、 全身での組織障害を認める先天代謝異常症のひとつである¹⁾.
原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾
  • GLAの酵素活性が低下すると、 基質のグロボトリアオシルセラミド (Gb3またはGL3、 別名CTH) が腎臓や心筋、 血管内皮細胞、 自律神経節、 汗腺、 角膜などの組織に蓄積することにより病変を呈し、多彩な症状を呈する¹⁾.

新生児の7,000人に1人との報告

  • 典型的なファブリー病の発症頻度は欧米人で40,000人に1人程度と稀な疾患とされてきたが⁸⁾、 近年の疫学研究ではかなり多くの患者が潜在している可能性が報告されている.
  • 熊本大学と福岡大学が共同研究で新生児を対象としたスクリーニング調査では、日本国内でのファブリー病発生率は約7,000人に1人であった⁹⁾.

左心室肥大患者の3%との報告

  • また、腎不全・心疾患・脳虚血性疾患などを対象にした、いわゆるハイリスクスクリーニングでも、 ファブリー病が1%弱~数%いることが報告されている²⁾¹⁰⁾¹¹⁾.
原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾
  • 左心室肥大患者で3%²⁾、 StageⅠ~Ⅴの慢性腎臓病患者で0.48%¹⁰⁾、 透析男性患者で1.2%¹¹⁾.

Fabry病の主要症状¹⁾

四肢末端の燃えるような疼痛、発汗障害

  • 古典的なファブリー病は特徴的な四肢末端の疼痛発汗障害が幼児期・学童期から始まる.

その他、複数の臓器障害

  • 20歳以降より尿タンパクやCre上昇などの腎機能障害、30歳以降より心肥大不整脈心不全脳血管障害などが認められる⁷⁾.
原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾
原因不明の心不全、小児期の四肢末端痛や低汗症、被角血管腫、腎不全、脳血管障害などの全身徴候、 特異な家族歴からファブリー病を疑うべきである.

ファブリー病の診断¹⁾

臨床症状と検査に基づき診断する.

原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾

遺伝学的検査

🔍白血球α-ガラクトシダーゼA (GLA)活性測定

乾燥ろ紙血を用いた検査キットは以下参照

🔍白血球GLAの遺伝子解析

ファブリー病の診断のための遺伝学的検査は保険収載されている. ただし、 衛生検査所にて検査を実施する場合は保険適用となるが、 研究施設で実施する場合は保険適用とならない. 検査を依頼する際は注意を要する.

その他の検査法(補助診断、保険適用外)

🔍血中lyso-Gb3、 尿中Gb3の測定

古典型男性患者では高値を示すが、遅発型患者や女性ヘテロ患者では軽度から中等度の高さや健常者と区別がつかない例もみられる.

🔍尿沈渣中のマルベリー細胞の確認

尿沈渣中に空胞化したマルベリー細胞 (脱落上皮細胞)が認められる. マルベリー細胞は主に尿細管上皮細胞であり、 細胞内の封入体はPAS染色やパパコロウ染色などにより染色が可能.

🔍腎病理所見、心筋病理所見

腎病理所見、 心筋病理所見ともに補助診断として重要である. ファブリー病患者の腎生検検体では、 HE染色により糸球体上皮細胞の泡沫状変化、 症状の進行により糸球体の硬化像が認められる. さらに腎生検検体のトルイジンブルー染色により、 Gb3の封入体が観察できる. また、 ファブリー病患者の心筋生検検体では、 心筋細胞の空胞化と線維化が認められる. 腎生検検体、 心筋生検検体ともに、 電子顕微鏡により同心円状の構造物であるゼブラボディが認められる.

🔍 乾燥ろ紙血を用いた検査

乾燥ろ紙血を用いた検査については、こちらのサイトにて詳しくご説明しています.4つのステップで簡単にファブリー病の酵素活性を測定できます.

原因不明の心肥大、小児期の燃えるような四肢末端痛で想起すべき疾患 ~ファブリー病まとめ~ ¹⁾

参考文献

  1. 日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社,
  2. N Engl J Med. 1995 Aug 3;333(5):288-93.
  3. J Med Genet. 2001 Nov;38(11):750-60.
  4. J Med Genet. 2001 Nov;38(11):769-75.
  5. J Genet Couns. 2013 Oct;22(5):555-64.
  6. J Am Soc Nephrol. 2002 Jun;13 Suppl 2:S139-43.
  7. QJM. 2010 Sep;103(9):641-59.
  8. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed, New York, McGraw-Hill, 2001, 3733-3774.
  9. J Hum Genet. 2013 Aug;58(8):548-52.
  10. Nephrol Dial Transplant 2021; gfaa324. doi: 10.1093/ndt/gfaa324
  11. Kidney Int. 2003 Sep;64(3):801-7.

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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